宗教を判定する場合の基準には、どのようなものがあるのか

正しい宗教の条件じょうけんとしては、まず人間の世界を離はなれた架空かくうの世界を基盤きばんとした宗教ではなく、人間のための宗教であり、人間がよりよく、幸せに生きるための宗教であることが大事です。そのためには、正しい生命観せいめいかんに基もとづき、正しい道理どうりを備そなえ、全人類を救済きゅうさいする現実の力をもった宗教であることが大切です。

 ではどのような方法で宗教を判定したらよいのでしょう。

 日蓮大聖人は、次のような基準をもって宗教の正邪せいじゃを判定することを教えられています。

 

 1 三証さんしょう

 文証もんしょう、理証りしょう、現証げんしょうのことをいいます。

 文証とは、経論きょうろんなどによる証拠しょうこであり、教えが独断どくだんではなく、仏の説いたお経によっても裏付うらづけられるかどうかを確かめることです。

 理証とは、教えが因果いんがの道理にかなっているかどうかを確かめることです。

 現証とは、その教えがたんに理論のみの観念かんねんではなく、現実の人間の生活の上にどのように証明されるかを確かめることです。

 

 2 五義ごぎ

 教きょう・機き・時じ・国こく・教きょう法ぼう流布るふの先後せんごの五つを知ることをいい、宗教の五綱ごこうともいいます。仏法を広めるに当たっての規範きはんであり、この観点かんてんに基もとづいて正しい宗教を選択せんたくすることです。

 「教を知る」とは、仏菩薩ぶつぼさつの説いた経きょう律りつ論ろんや、あらゆる思想、哲学、宗教の勝劣しょうれつ浅深せんじんを見究みきわめることです。

 「機を知る」の機とは衆生しゅじょうの機根きこんであり、教えを受け入れられる状態にあるかどうかを見定みさだめることです。

 「時を知る」とは、広まる教えに相応そうおうした時代であるかどうかを知ることです。

 「国を知る」とは、それぞれの国が、どのような教えに縁えんのある国かを知ることです。

 「教法流布の前後を知る」とは、先に広まった教えを知って、次に広まるべき教えを知るということです。

 

 この五義のうちの、教の勝劣浅深を判定する基準として、五ご重じゅう相対そうたい、五ご重じゅう三段さんだん、四し重じゅう興廃こうはい、四し重じゅう浅深せんじん、三重さんじゅう秘伝ひでんなどがあります。このなかのおもなものを簡単に説明しますと、

 「五重相対」とは、内外ないげ相対・大小だいしょう相対・権実ごんじつ相対・本迹ほんじゃく相対・種脱しゅだつ相対の五重であり、仏教以外のすべての教えと仏教との比較ひかく検討けんとうから始まり、小乗教しょうじょうきょうより大乗教だいじょうきょう、権大乗教ごんだいじょうきょうより実大乗教じつだいじょうきょう、法華経迹門しゃくもんより本門、文上もんじょう脱益だっちゃくより文底もんてい下種げしゅと、次第に高度な教えを選択せんたくしていく方法です。

 「四重興廃」とは、釈尊の教えを、爾前経にぜんぎょう、法華経迹門、法華経本門、観心かんじん、と従浅じゅうせん至深しじんして勝劣しょうれつ興廃こうはいを判じることです。

 これらの基準に基づいてさまざまの角度かくどから判定を重ねるとき、はじめて唯一ゆいいつの正法を選定せんていすることができるのです。